徒然なるままにビジネスインテリジェンス

渋谷のIT界隈で働く人のブログです。日々感じること、気づいたことなど書いていきます。

簿記の勉強がつまらないと感じる人におすすめの書籍

簿記の勉強がつまらない・・・

前職、いや前々職にいたときから、簿記を学ぶ機会があったのだが、どうも簿記の学習を楽しめない自分がいた。説明されていること自体はシンプルなはずなのだが、どうも覚えが悪い。土日などの休みや平日の仕事前・仕事後に勉強時間をとって問題演習したりするのだが、どうも楽しくない。

 

思うに、簿記の勉強のほとんどは、規則やルールを説明する内容がほとんどで、それに従った計算作業を間違いなく行うことが求められる(自分が勉強していたのは、2級レベルまでなので、もっと上のレベルに行けば異なる論点が出てくるのかもしれません。もしそうでしたら、すみません。)。

 

つまり、1+1というお題が出てきたら、その答えを2と答えるような、そんなイメージの学習内容なのだ。だから、学びの中で議論の余地がないし、興味を掻き立てられにくい部分があるのだろう(自分はあれこれと色々な可能性を考えるのが好きで、多様な解釈、意見が出てくるような学問が好きだ。大学・大学院で政治学を学んでいたがほとんど苦にならなかったのは、まさしく政治が議論百出で、いろんな考えから意見を展開できる領域だからだろう)

 

なぜつまらないのか?

とはいえ、ビジネスマンにとって簿記の知識は必要なので、勉強はしたい。ただ、つまらないと勉強の効率が悪い。

そもそもなぜこんなにつまらないのか?

そう考える中、ネットを調べてみると、下記のブログ記事に辿りついた。

 

簿記って日本で面白く無いように教えられているのはなぜ?: 簿記2級試験勉強:ごまざえもんの棚

 

ざっくり内容をまとめると、海外では簿記というものをもっと面白く、重要な学問として教えているようだとのこと。そして、日本では(敢えて)つまらない無味乾燥なものとして教えているかもしれない、ということであった(!)

 

やや衝撃を受けつつ、もっと本質的に簿記を学びたい!と思い、英文簿記を学ぶことに。英文簿記なら海外で教えられているような、もっと本質に近い学びができるのではないかと考えたのだ(単純)。

BATICでIFRS・英文簿記を学ぶ

そこで、BATICと呼ばれる試験の対策を始めた。英語でIFRS国際会計基準に準じた簿記を学ぶ試験である。

 

学んでみると、これはこれで面白く、英語で学ぶ方が、いかめしい漢字の専門用語ばかり出てくる簿記よりも、むしろ分かりやすくさえ思えた。特に、

  • 国際会計検定BATIC Subject1公式テキスト〈新版〉: 英文簿記

は分かりやすく書かれていて、とても良かった。

subject2の方の解説書は、これに比べるとちょっと分かりづらく書かれていたように感じる(高度な会計知識を前提としているような書き方に感じた)。試験も受けてみたが、この学習法は簿記・会計への理解を深める上でも良いと思うので、関心がある人はやってみると良いと思う。

それでも消えなかった簿記を学ぶことへの関心

ただ、この勉強をしても、まだ簿記というものをそれほど面白いと思えず、なぜ学ぶのだろう、という関心は消えなかった。

その問題意識を持ち続けていたときに、たどり着いたのが、

である。これは、稲盛和夫さんが京セラを創業してから実務家としてどのように会計と向き合ってきたかを稲盛さんが語っている書籍である。稲盛さんはもともと技術者として創業されていたことから、財務・会計については創業時は素人だったそうだ。

 

稲盛さんの実学に学ばせていただく

そんな稲盛さんが企業経営をする上で、簿記のルールについて「なぜこうなのか?」と

実務家として素直に問い続けてこられたことが書かれている。

 

例えば、購入したものを費用として計上すべきか、資産として計上すべきかについて、下記のように語られている。

何度も繰り返して使えて、その価値が残るものは、会計上資産とすることになっているが、「本当に財産としての価値を持つものなのか、そうでないのか」というのは、経営者が判断すべきものである。そして、その判断の善し悪しの結果はすべて経営者の責任である。経営者にとって、捨てる以外に方法がないものは、資産とは言えない。経費で落とすべきである。

その上で、例えばバナナの叩き売りを行う業者が、それを行うための道具(箱や布などバナナを良く見せるための装置)を買ったとした場合に、それは会計上は資産になるが、実質的にもう一度使うことは難しい(見た目が汚くなったりして、次に売る時に使えない)のだから、本来は費用として計上すべき、という興味深い例が乗っている。

 

そのほか、品目ごとの減価償却費の償却年数を役所が一律に決めていることが、経営の実態から離れていたりなど、数々の考えるべき論点をあげてくださっており、企業運営の正確な把握と、会計のルールについて考える上で、とても実践的で学びになる論点をあげてくださっている。

 

これはとても面白い本であった。本質に迫るよう、稲盛さんが納得いくまで掘り下げておられるからだと思う。この書籍を読んだからとて、簿記の全てがわかるものではないし、簿記の試験の点数が上がるわけでもないと思う。しかし、机上の勉強から経営実務への橋渡しをするきっかけ、そして簿記の本質的な理解を促す上で大変勉強になる書籍でした。貴重な書籍を執筆くださり、ありがとうございます。